長男の陶真の中学受験塾どこに?(3)

陶真が小4生の冬のある日、いつになく浮かない顔をして、塾から帰ってきた陶真に、それを気にした夫が「どうしたんや?そんな顔して」と聞いてはみたものの、「うん…」と目線を下へ落したまま、どう言えばいいのかわからないようすでした。

立ち尽くす陶真に、苛立ちを隠せない夫でしたが、陶真は重い口を開き、帰りの電車の中で起きたことを話し始めました。

同じ小学校の同級生の一人から、その子が食べた飴の包み紙を、途中の駅のホームのごみ箱へ捨てるように言われて、陶真はその場で断れなくて、それに従ったことが原因でした。

その同級生とは、ふだんから仲が良いというわけでもなく、塾で顔を合わせる程度の関係性だったので、陶真にとっては、やりたくないことを強要されて、それを「いやがらせ」と感じたようでした。

夫は「いややったら、断らんかい!」と、腹立たしさをあらわにしていました。
その同級生に対してと、何より煮え切らない陶真に対して…。

それまでも、陶真と仲の良いお友だちとの関係は、どちらかというと「浅く広く」ではなく、「狭く深く」という方が、陶真の性に合っているようで、その場だけの関係性を持つだけの器用さが、陶真にはありませんでした。





陶真は、いつもどおり塾へ通ってはいましたが、そのできごと以来「カリキュラムテスト」にしても「模試」にしても、どれも成績が伸びるでもなく、ほぼ変わらず、ただ塾へ通っているだけに近い状態でした。

もしかして、またもや「転塾」か?…。
それよりも、今の陶真にとって中学受験が本当に「必要」か?という疑念が湧きはじめました。


塾の帰り道で起きたことも、塾での成績に影響を与えているのは確かでした。
「それくらいのことで、今やるべきことを見失わないで」と思う気持ちもありましたが、今の陶真にすれば、お友だちとの関係は、陶真の中の重要なところに位置しているようでした。
夫は「そんなこと気にしてて受験なんかできるか!塾もやめるか?」
そう言われて黙っている陶真に、思わず私は「やめへんやんな?違う塾に行くか?」というと、陶真は、こくりとうなづきました。
夫は「それやったら、また塾、探さなあかんのか?もうやめとけ!」という突き放した言葉とはうらはらに、ふたたび塾探しが始まることになりました。

陶真中学受験に対しての疑念はあるとしても、色々な学校を見学したり、塾へ通ったりすることで、陶真も私たちも、中学受験することが「あたりまえのこと」になっていました。


あれこれと探すうちに、ある「最大手でもなく、地域密着でもなく、その中間くらいの規模の塾」にたどり着きました。
その塾には「国公立中高一貫校に重点を置くクラス」があることを知りました。

この塾の良い点
①大手塾よりは少人数のクラス体制なこと
②わが子を担当している先生との相談も気軽にできること 
③先生と生徒、生徒同士の雰囲気が良かったこと
④集団指導と個別指導のどちらも対応していたこと
⑤教室の設備が良かったこと

この塾の良くない点
大手の集団指導塾」、「個別指導塾」、「地域密着型の集団指導塾」と比較してみて、とくに目立つ良くない点が見つかりませんでした。


陶真の成績が上がらないのもさることながら、私たち家族にとっては、年を追うごとに増えていく塾費用も気がかりなことのひとつでした。
およそあと2年のあいだに、陶真の成績が「国公立中高一貫校」を受けられるくらいになってくれれば、入学後の経済的な負担が軽くなるという思いが強くなりました。

年が変わり、陶真が小5生にさしかかる3月、これで最後といえる入塾テストを受けて、「国公立中高一貫校」をめざすコースのある、こちらの塾への22度めの「転塾」となりました。

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