中2生になった陶真は、気が合う同級生同士のグループで、学校でも放課後でも、そして休日でも、行動を共にする機会が増えていきました。
そのグループの中には、おじいさんがいくつかの山を持つ地主の岡沢くん、比較的似通っている環境の河合くん、クラスの男子の中で成績がトップの森くん、会社経営で成功されている家庭の安東くん、同じ区内にある億ションの住人である、同じサッカー部の青木くん、そして元プロスポーツ界にいた父を持つ桐谷くんがいました。
そのグループででかけるときのお小遣いは、公立出身の私の感覚での金額よりも3倍強くらいは多いと感じましたが、やはりいつもそれくらいは持たせるようにしました。
彼らの服装や持ち物も普段使いといえども誰もが知るブランドをさりげなく自然に身につけていて、さすがにそこまではお付き合いできるはずもありませんでしたが、私自身がこれくらいなら引けを取らないと思えるめいっぱいの範囲で、陶真に身につけさせることにしました。
地元の同級生と合流するのとは違い、それぞれ待ち合わせ場所に向かうときも交通費が必要なことと、USJやスポッチャなどの施設へも金銭的なことは二の次で遊びに行く計画を立てるので、夫はよく「金はどうすんねん⁈」と言っていましたが、ホントに
私立中学は交際費が想像以上に多く必要でした。
日々節約の2文字に追われながら生活している私たち家族にとって、痛い出費ではありましたが、わが子のためにできる限り彼らとの交流を持つための費用を捻出するようにしました。
なぜかといえば、裕福な家庭で育っていたり、社会的に成功している両親を持っていたりという、私たち家族からでは到底感じることができない、大げさにいうと人生観のようなものを、彼らとの何気ない会話や交流の中で、直に感じ取れるまたとない機会を1秒でも多くしてあげたいという気持ちからでした。
ある程度の経済的な豊かさや社会的な成功を得ているのは、おそらくは「物事のとらえ方」や「取り巻く環境」を整えているはずでした。
そして陶真は、桐谷くんたちのおかげで、私たち家族ではとうてい連れて行くことができない「きらきらとかがやくところ」へ行き、私たち家族にはめったにお目にかかることができない「きらきらとかがやく人たち」にも会えることになりました。
非日常なその場の空気を肌で感じることで、いざ自分自身が何かを成し遂げようとしたときに、より近い臨場感を持てるのではないかと思いました。
「交友関係のイジメについて」は、陶真の学校でも徹底的に追及がなされていて、2年生のあるときの保護者会で、陶真のクラスの女子生徒(仮にBさん)の保護者から、Bさん本人がイジメにあっていると感じ精神的に追い詰められていることを、切実に訴えかけるのを聞くことになりました。
生徒自身がいじめられていると感じた場合は、いじめたとされる生徒は学校で規定されている厳しい処分の対象となりました。
そのあと、先導してBさんをいじめていたとされた1人の女子生徒が学校を去ることになりました。
この場合は、義務教育の範囲として、地元の公立中学に転校となったようでした。
イジメについては、多感なこの時期、どの学校でも起こりえることで、ましてや私立中学に限ったことではありませんが、陶真の学校ではとても大きな課題としていることが感じられました。
イジメということではないにしても、クラスに行きにくい場合、保健室へ登校している同級生も何人かいて、自らでクラスに戻れるようになるまで、生活指導の先生による見守りがありました。
また別の同級生の一人は、海外旅行帰りのいで立ちのままで登校してきたことがありました。
本来なら真っ先にその同級生へ、批判や嫉妬が向けられるはずですが、それに対してまず善悪を決めることではなく、陶真たち生徒を含め学校全体が、それをいったん寛容にも受けとめていることに驚きました。
ここでは、常識にとらわれていない、まずその子ありきの一人ひとりの個性やそれぞれの家庭の状況を踏まえた上での指導がなされているのを目の当たりにすることになりました。
【2年生の陶真】
5月―①定期考査
6月―学園祭、プール実習
7月―②定期考査2泊3日で自然学習
10月―③定期考査、体育祭
11月―合唱コンクール
12月―④定期考査
2月―⑤定期考査、文化発表会
1年生の3学期、陶真のクラス担任の先生から思いもかけない言葉を聞くことになりました。
「陶真くんには、クラス委員長として、クラスをまとめてほしかった」と。
その言葉は、小学生のときには、可も不可もなく「ザ・普通の子」だった陶真が、私立中学合格というハードルを越え、精神的に成長したという証に違いありませんでした。
結局、陶真のそれは実現することなく、名乗りを上げた同級生に譲ることになりましたが、少なくとも私には、今でも「心に残る言葉」のひとつとなりました。
成績に関しても、もともと得意とする教科では、学年でベスト10位になるなど、自分が頑張ることでクラスの順位を上げていけるんだという積極的な考えが身についてきたようでした。
遅咲きともいえる長男の陶真の目覚ましい成長ぶりが感じられるのも、私立中学受験を選択肢に加えたことの賜物ということができました。
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