毎年のように中学受験の前年の12月は「受験校への出願」という、成績いかんに関わらず、決してうっかりミスをしないようにしたい、受験を控えた家族にとって侮れない時期でもありました。
特に公立中高一貫校の場合、私立中高一貫校と比較すると、出願期間が短い傾向にありました。
涼佑が第1志望校としている公立中高一貫校も例外ではなく、その期間は2週間足らずとなっていました。
第1志望校は「公立中高一貫校」ー関西圏の中学入試統一日より4日後に入試
第2志望校は「共学の難関校の私立中高一貫校(学費の高さが障壁)」ー関西圏の中学入試統一日午前入試
第3志望校は「共学の中堅校の私立中高一貫校(兄と同じ)」ー関西圏の中学入試統一日午後入試
最終的に私たちは、入試にかかる費用をできるだけ最小限に抑えることを優先しました。
私立中高一貫校では、入試が複数回あって、通常、受験したい分の受験料を納入することで、そのすべてを受験することができましたが、涼佑は、第2志望校を「3回受験できるのを1回受験するだけ」にとどめ、1回のチャンスに合格をかけることになりました。
【2校の私立一貫校入試】
涼佑と、通っている塾で同じく「公立中高一貫校をめざすクラス」で同級生の根本航季くんと、同じく「難関校レベルの算数講座」を受けている同級生の山内雅矢くん、3人ともに、ここの入試を受けることになっていました。
涼佑と航季くんの2人は、関西圏の中学入試統一日午前入試を、雅矢くんは、関西圏の中学入試統一日の午後入試を受けました。
3人ともに、関西圏の中学入試統一日より4日後に入試がある「公立中高一貫校」を受験するため、それ以外のところを受験する場合は、第1志望校がもしも不合格だったときのために、ほぼ100%の確率で合格の可能性が期待できる、初日の「中学入試統一日」におこなわれる「私立中高一貫校」を受験するのが、中学受験でも周知の事実になっていました。
「共学の難関校の私立中高一貫校」ー関西圏の中学入試統一日午前入試の日
この日も私は、陶真のときと同じく、たぶん涼佑よりも心臓が飛び出しそうなくらいになっているのを感じていました。
涼佑と私が坂を上っていくと、正門のすぐ前で、朝のあいさつとともに、学校長が出迎えてくれていました。
説明会会場のときと同じ、優しく、それでいて凛とした学校長が、そこにいました。
それに応えるように、朝のあいさつをしたことで、ガチガチな私が少しだけほぐれたのを感じました。
ここは、数年前より大学合格実績が飛躍的に伸びていることで、注目をされている難関校のせいもあって、受験生の増加に伴い、各中学受験塾でも合格に向けて力を注いでいるようでした。
それに伴ってか学校のほうも、入試をおこなう教室を、各塾ごとに分けるなどしていました。
根本航季くんのママと、入試が終わるのを校舎の玄関前で待っていると、航季くんと塾の同級生、そして涼佑の3人が出てきました。
そのとき涼佑が、航季くんたちに「算数の問題、わりと簡単やったよな?根元たちもそう思ったやろ?」という声が聞こえきました。
航季くんたちは、その問いかけに応えるでもなく、2人はただ目を丸くしたまま、どう返答したらいいか戸惑っているようでした。
そんな2人の反応をものともせずに、そのあとも涼佑は、算数以外の2教科の入試問題についても、自分なりの分析を話し続けていました。
本番の入試で、涼佑がこんなに冷静になれているのも、塾での「難関校レベルの算数講座」が功を奏したといえるのかもしれないと、私は感じていました。
このあと、航季くんたちと別れて、それぞれ午後の入試会場へ向かいました。
「共学の中堅校の私立中高一貫校(兄と同じ)」ー関西圏の中学入試統一日午後入試
昼食を済ませたあと、涼佑と私は馴染みのある道をたどり、涼佑は校内の入試会場へ向かい、私は、陶真のときと同じ保護者待合室で、涼佑の入試が終わるのを待つことになりました。
入試が終わって出てきた涼佑の傍らには、池町創(いけまちそう)くんがいました。
幼いころから仲が良い2人は、何かを話しながら、ホッとしたような笑顔を見せていました。
創くんは、わが家のすぐ近くに住む、小学校の同級生で、わが家の兄弟2人が共に、中高中高一貫校に進学するのを目の当たりにし、急きょ1年前から中学受験に挑むことを決めて、この日をむかえることになりました。
そんな涼佑と創くんは、今日一日でひと回りもふた回りも大きくなったように感じました。
涼佑は、一度の入試にかけることになった午前中の入試も、冷静に対応できていたことと、昨年受けたここのプレテストが、じゅうぶんに合格できるところにいたせいもあってか、午後の1教科だけのこの入試も、とても落ち着いて臨めたこともあって、そう感じたに違いありませんでした。
結果の合否はどうあれ、これまでの中学受験の過程で経験したすべてのことが、これからの涼佑にとって何らかの糧となっていくであろうことが、確かな手ごたえとして、私の中に残りました。
兄の陶真には「陶真の中学受験」があったように、弟の涼佑には「涼佑の中学受験」がありました。
私たちが挑んだ中学受験は、そのことを受け入れて、同じ環境のもとで育つ兄弟という枠組みをはずし、わが子それぞれの「成長に応じた接し方」や「教育環境の与え方」を、わが子たちの未来をより明るいものにするために、その都度、それを見守る私たちが模索していくことこそ、とても大切なことだと考える良い機会となりました。
いよいよ明日は、涼佑の「中学受験への挑戦」の終盤となる、2校の合格発表日でした。
私ひとり、眠れない夜を過ごすことになりました。
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