【埋めれないであろう夫と義母とのわだかまり】
夫と義父母たちとの連絡が途絶えたかに思えたある日の午後、何の前触れもなく、義父母、夫の弟、そして夫の妹夫婦が、わが家を訪ねてきました。
義母は、リビングのソファーに座るなり、怒りが今にも吹き出しそうな表情で、
「今日なんで来たかわかるか?自分の弟にまで無心したんやってな」と、夫に突っかかっていきました。
私に「そんなことをしても無駄だ」と言われると思い、実はこのときも夫は、私に黙って弟に連絡を入れていたのでした。
弟からそのことを聞かされた義母は、弟にも困りごとを持ち込んだ夫を懲らしめるために乗り込んできたのだと、義母の様子から私にはすぐにわかりました。
夫の弟そして義父母には、金輪際私たちに援助する気がないことも…。
義母にはけっして私たち家族のことを理解してもらえないと頭ではわかっていながら、このときの私は「涼佑のために何とかお願いします」と、頭の中とはうらはらに、気づけば土下座をして、何度も懇願していました。
それからの1時間のあいだ、重罪を犯した犯人のように、夫以外の家族から、過去にさかのぼり、お金の使い方を責められ、夫はまるで、針のむしろのようでした。
どうしてここまで家族の中で夫だけを敵とみなし、容赦なく頭ごなしに悪者扱いするのか?
どうしてこんなにもわが子たちのより良い未来を描こうとしてることが非難されるのか?
夫が今までわが子たちにやってきたことや、その他の家族旅行などのお金の使い道についても、過去にさかのぼり、夫はことごとく非難を受けていました。
思い余った夫が、軽く蹴ったダイニングテーブルの椅子が倒れ、義母の足に当たってしまいました。
誰の目にもほんの軽い接触に見えたはずでしたが、義母は「母親に暴力ふるうとはなんちゅう子や!」と、大げさに騒ぎ始め、夫と私以外はそんな義母に同調し、それまで黙って事の成り行きを見守っていたかにみえた妹の夫までもが夫に詰め寄りはじめました。
そもそもなぜ義母は妹夫婦をこの場へ呼び寄せたのだろうか?何のために?
私だったらそんなことはしない。
というより、できれば他の誰にも知られたくないことでした。わが子がかわいいなら…。
このときからさかのぼること十数年前、わが子たちと地域の児童センターへ通っていたころ、義母を一文字であらわすと?という質問に答えたことがありました。
私がすぐに浮かんだ文字が「異星人」の「異」という一文字でした。
もうすでにそのころから、義母は、私とは別の惑星に住む人かのように、私の理解を越えたところに存在していたのだということを思い返していました。
いくら話し合っても平行線だったことに業を煮やした義父は「おかあちゃん、もう帰ろうや」と。
それが最後の合図の言葉となり、義父母たちは帰っていき、リビングに取り残された夫と私は、しばらくただ呆然としていました。
私なら母として、たとえわが子がどんなことになっても、たとえ私ひとりだけになったとしても、最後までわが子の側に立ち続ける、そうでありたい。
そう思えない母親がいることに、それもこんな身近にいることに、どうしようもなくやるせない気持ちが募っていました。
このできごと以来、夫と私はもう二度と、義父母たちに偶然出くわす以外会うことはない気がしました。
【ある考え、それは…】
家族からの援助というものが完全に断たれてしまった私たちには、もはや猶予さえも残されてはいませんでした。
やはりこうするほかはないと、少し前に私に浮かんだある考えを夫に話すことにしました。
「この家、売りに出さへん?」
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